「不可能」から「可能」へ。ゼロから始まった、ロボット導入への挑戦
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「不可能」から「可能」へ。ゼロから始まった、ロボット導入への挑戦
会社概要

株式会社ティービーエムは、発電関係・半導体・プラント関係・航空機向けの部品加工を主な事業としている企業です。
「ものづくりや人づくりで新たな価値を創造し、人々の暮らしと社会の発展に貢献する」という経営理念のもと、変化する時代とともに常に技術革新をし続け、確かな技術を通じて各分野を支えています。
今回は、初のロボットシステム導入について、代表取締役社長 唐澤様、生産技術部取締役部長 細井様、生産技術部技術課課長 北原様より、経営目線・現場目線の両面から、当時のリアルな心境や導入後の変化についてお話を伺いました。
導入システム
パレットチェンジャーへのワーク供給ロボットシステム

導入のきっかけ

(左から 北原様、細井様、唐澤様)
― まずは、今回ロボットを導入されることになったきっかけや、当時の背景についてお聞かせください。
代表取締役社長 唐澤様
当社は、発電事業の中でタービンブレードの加工を行っています。
タービンブレード事業部は当社の主力事業で、一時は会社全体の売上の8~9割を占めていましたが、東日本大震災を契機に需要が落ち込み、ここ数年は収益性の低さが経営課題となっていました。
中期経営計画では、収益性の高い事業へと経営資源を配分していく方向性であったものの、売上規模としては依然としてタービンブレード事業部の割合が最も大きく、「この事業を守り、会社も守っていかなければならない」―そんな強い思いから、なんとか黒字化していきたいと考えていました。
しかし、採用が難しい状況の中、現場の力だけで乗り越えるには限界があり、事業構造そのものを変えていく必要があるのではないかという話が社内でも出始めていました。そうした中で、自動化や長時間無人加工といった技術の力で生産性を向上させ、事業の競争力を取り戻すための検討を進めていたところ、ちょうどものづくり補助金の公募があり、「このチャンスを逃してはいけない」と背中を押される形で、ロボット導入へ向けた本格的な検討が一気に加速していきました。
― 現場の視点からも伺いたいのですが、実際に作業をされる中でどのようなことに悩まれていたのでしょうか?
生産技術部 技術課 課長 北原様
元々日勤と夜勤の二交代制で稼働しており、交代の合間に稼働が止まってしまう時間がありました。
生産計画を立てる中、停止時間を加味するとどうしても1日の生産量が制限されてしまうため、「その時間も動けばいいのに」と感じており、省人化や無人化によって止まっていた時間が動くようになれば、その分生産性が上がるのではないかと以前から考えていました。
また、当社の機械は2つのパレットが交互に動く仕組みですが、2パレットしか加工ができないため、そこでの停止も避けられません。取り付け作業にも人の手が掛かるので、そういった部分も無人化をしたいと。
加えて、製品によっては単価が安く人件費が掛かってしまう課題もありました。
そのため、今回ロボットで自動化をするにあたっては、動かない時間を稼働させることでコストを下げられないか、人をなるべく減らすにはどうしたらよいかということを含めて検討しました。 ロボットの導入により、長時間動かせるということがメリットとしてどう出てくるのか、期待していましたね。
生産技術部 取締役 部長 細井様
自動化・省人化が世の中の流れとして叫ばれている中、当社では初めてのロボット導入ということもあり迷いもありましたが、ちょうど補助金の公募が重なり、「このタイミングでなければ出来ないだろう」と踏み切りました。
今回は比較的高スペックなロボットを導入でき、治具についても通常ではなかなか揃えられないものを用意することができたので、本当に良いタイミングだったと感じています。
導入前の工程内容
― 今回、ロボットでシステム化を行ったパレットチェンジャーへのワーク供給の工程について、従来はどのような体制で稼働されていたのかお聞かせください。
生産技術部 技術課 課長 北原様
元々、工程は2工程に分かれていましたが、2交代制で2工程となると、実際に携わる作業者は1工程目に日勤・夜勤、2工程目に日勤・夜勤と、合計4名が関わることになります。
機械が止まるたびに製品の取り付け・取り外しが発生し、日勤と夜勤の交代の間は稼働が止まってしまうため、土曜日・日曜日も休日出勤が必要な状況でした。 当時の稼働時間については、大体16時間ほどで計算しています。
導入においての懸念点
― 初めてのロボット導入にあたり、導入決定に至るまでにどのような懸念点がありましたか?
代表取締役社長 唐澤様
まず、当社が生産しているものは量産品ではなく、多品種少量のような生産形態の中で、自動化というものが本当に成立できるのかという点が大きな懸念でした。
同じものをひたすら作るのであれば、知識がない中でも可能だろうという漠然とした感覚はありましたが、当社のように100個作って終わり、場合によっては1個という製品もある中で、自動化したところで果たしてメリットがあるのかというのが非常に不安な要素でした。
さらに、社内にロボットや自動化に関する知識を持つ人材がいないという点も大きな課題でしたね。
社内で最も知識のある担当者でも当時は独学で勉強している段階だったので、どんな機種を選び、どのような仕様にすればいいのかといった判断材料すらない状態の中で、本当にこの設備を導入することができるのか?逆に現場の負担が増えてしまうのではないか、製造現場を混乱させてしまうのではないかという懸念もありました。
費用面についても、勝算がはっきり見えない状況の中、補助金を活用するとはいえ大きな投資になります。
もし導入が上手くいかなかったらどうしよう、失敗したらどうしようといった思いも頭をよぎりましたね。
「これは大丈夫だろう」と思えるものが1つもなく、懸念材料しかなかったという状態でした。
― 現場側でも、さまざまな懸念があったかと思います。
生産技術部 技術課 課長 北原様
社内では誰も経験がない中、新しい工作機械に加えてロボットが導入されることになり、機械も覚えなければならない、ロボットも覚えなければならない、プログラムやティーチングも覚えなければならない…すべてがゼロからのスタートということが、どうしても懸念でした。KUKAの研修を受けた作業者からも、内容は相当難しかったと聞いています。
実際に設備が入ってきてからも、「本当に動くのか」「自分たちで動かせるのか」といった心配ばかりで、治具製作や機械操作を含め、初めてのことだらけで本当に不安でしかなかったですね。
毎日ドキドキしながら「どうしよう、どうしよう」と悩んでいたのを覚えています。
期待と不安の入り混じる中、実際の導入に向けては、多くの方からご意見やご協力をいただきながら進めていきました。
失敗できないというプレッシャーがありながらも、やはり一歩一歩進んでいくしかないので、問題が出てきたらその都度解決していく…そういったことの繰り返しでしたね。
とはいえ、きっかけが揃わなければ踏み出せなかった取り組みだったからこそ、準備段階も含めて大きな経験になったと感じています。
選定理由
― 今回、弊社にご依頼いただいた理由や経緯についてお聞かせいただけますか?
代表取締役社長 唐澤様
機械設備でお世話になっている取引先の方にご相談させていただいたことがきっかけです。
そもそもロボット導入に関わる会社がどこにあって、どういう会社があるのかもほとんど知らない状態からのスタートでしたので、そこで初めて御社のことを知りました。
ロボットの選定から導入まで、当社の生産形態に合わせた提案ができる会社だというお話をお聞きし、期待を持ってお願いさせていただきました。
実は、当初は別の依頼先で何度も打ち合わせを重ねて進めていたのですが、最終的に当社の希望は実現が難しいという結論になってしまったんです。その時点では、導入自体を諦めなければいけないかといった状況で、社内でも「もう無理なのではないか」という声が出ていました。
そうした状況で検討を進めていた中、当社が求めていた自動化・無人化の実現に向けて具体的な提案をいただき、結果として今回の目的を達成することができました。そうでなければ実現できなかったと思います。 今回ご支援いただいた御社があったからこそ今があると、本当に感謝しています。
導入効果
― ロボットシステムの導入後について、従来と比較してどのような変化や効果がありましたか?
生産技術部 技術課 課長 北原様
導入後の変化として一番大きいのは、やはり土日も稼働できるようになったことですね。無人で進めてくれるのでとても頼もしいです。その一方で、準備する側は急がされるような感覚もありますが、それはスピーディーに生産性が上がっているという嬉しい意味でもありますね。
工程についても、製品を1つセットしてボタンを押せば2工程分が終わって帰ってくるようになりました。
フルで動かした場合には一日中稼働できるようになり、カッター交換なども含めると実質20〜22時間程稼働しています。
(※以前は16時間ほど)
また、関わる人数にも変化があり、4名携わっていたところが半分になる時もあります。
小ロットとなるとどうしても途中で段取り替えが出てきてしまうので、日勤か夜勤のどちらかで人が入ることにはなりますが、基本的には日勤で段取りをして、量産に入ったら夜勤を稼働させないという形で進めています。
最終的には、量産が入って金曜日の夜勤明けにボタンを押せば、土曜日・日曜日くらいまで機械が回り続けるという体制になり、土日の休日出勤もなくなっていくところまで見えてきていますね。
月間の稼働時間についてはロット数にもよりますが、多い時にはひと月に500時間近くまで届きそうなところまでいきました。
その後、ロット数が変わって段取りが増えたため、現在は大体320~330時間程になっていますが、今後は450時間、500時間、さらに600時間くらいまで回していけるよう、段取り時間の短縮や効率化の取り組みを随時進めています。

― 経営的な目線からはいかがでしょうか?
代表取締役社長 唐澤様
正直なところ、ロボット導入について当社においては現実的ではなく、実現するのはなかなか難しいのではないかといったイメージがありました。
ただ、今回携わったメンバーにとっては不可能だと思っていたことが可能になったというところで、不可能で終わりにせずに一歩前に進める、そんな体験ができたのではないかと思っています。
「可能性は、追求していかないと開かれていかない」ということを、自身も含めて感じることができました。
これも、効果の中の一つとして大きいところですかね。
生産数が増えたということが一番わかりやすい効果だとは思いますが、それに加えて社内的にも「やればできるじゃないか」というような雰囲気になったので、見えないところでいい風が流れたのではないかなと感じています。
― その他、導入を経て実感されていることはありますか?
生産技術部 技術課 課長 北原様
個人的に、ロボットを導入し量産体制を整えているところは、アルミ製品が多いというイメージがありました。
当社が扱っているのはステンレス製品なので、製品の精度を安定させることに関して難しさを感じており、そういった点は機械メーカーの方にも相談しながら進めてきましたが、量産をいかに無人で流し続けるかということや、素材関係の難しさはずっと体感しているところですね。
ただ、作業者が気づいたことを都度相談しながら、「こうしたらいいんじゃないか」「こうしてみよう」と1個1個懸念事項をつぶしていった結果が今につながっているのかなと思っています。
サポート対応
― 現在に至るまでの弊社の対応はいかがでしょうか?
生産技術部 技術課 課長 北原様
現状、技術的なサポートでご連絡したのは1回だけですが、迅速にご対応いただけたので大変助かりました。
また、先日ご訪問いただいた際には、相談していたところとは別の箇所についても確認をしていただくなど、丁寧にフォローしていただいております。 問い合わせることが少ないこと自体が問題なく稼働できている証拠だと思うので、引き続き変わらずご対応いただければと思っています。
今後の展望
― 株式会社ティービーエム様の今後のご展望についてお聞かせください。
代表取締役社長 唐澤様
今回の導入は、単なる設備投資だけに留まらず、これからの未来のものづくりへ踏み出す大きな一歩になりました。
さまざまな不安はありましたが、導入が実現したことにより現場の負担軽減や品質の安定、生産効率の向上といった成果が、まだ100%とは言えないものの見え始めてきています。
今後はこの成果を社内全体に定着させながら、人がやるべきこととロボットに任せることを明確にし、さらに他工程への自動化展開や夜間の無人運転の拡大につなげていければと考えています。
また、現在は限られたメンバーで取り組んでいるため、ロボットを扱える人材や工程改善・工程設計を担う人材の育成も含めて次世代の現場力を高めていくことが、これからの当社にとって大切なことだと感じています。
導入から約1年半が経ちましたが、当社の競争力をさらに強くしていくためにも、ここで止まることなくさらに展開していきたいです。そういった方向性を示しながら、全社で取り組んでいきたいと思っています。
ロボットの導入を検討している方へのアドバイス

代表取締役社長 唐澤様
「自社では無理なのではないか」「量産加工をしている会社ではないから、導入しても効果がないのではないか」
そう感じている企業の方も多いことだと思います。当社も実際にそう感じていましたが、さまざまな検討を重ねる中、不可能に思えたこともご指導をいただきながら一つひとつ現実に変わっていきました。
今回の導入を通じて一番強く感じたのは、「やってできないことはない。挑戦すれば道は開ける」ということです。
当社はその事実を身をもって体験しました。本当に未知の分野での挑戦で、「こうすればできる」という確証が一つもない、とても大きな冒険ではありましたが、それが現実になったことは会社にとって大きな経験になりましたし、社員一人ひとりの成長にもつながったと実感しています。
ロボットの導入を検討されている方には、ぜひ前向きに一歩を踏み出していただきたいと思います。
迷いはあって当然だと思いますが、その一歩が会社の未来を変えたり、大きな転機になったり、 将来の財産になっていくのではないかと感じています。
会社情報

株式会社ティービーエム
本社:〒399-4301 長野県上伊那郡宮田村6750番地
伊那工場:〒396-0041 長野県伊那市西箕輪2640番地
創立:1979年12月
従業員数:145名
https://www.tbm-corp.co.jp/index.html
Interviewee
株式会社ティービーエム
代表取締役社長 唐澤 広晃 様
生産技術部 取締役部長 細井 浩一 様
生産技術部 技術課 課長 北原 大和 様